のあちゃん3歳虐待死亡事件 大田区で児童虐待防止に向けてできることは本当になかったのか

もと大田区議会議員 岡高志です。

もと区議会議員として、久しぶりのブログ投稿です。

大田区蒲田の3歳児虐待死亡事件

2020年6月、梯沙希容疑者が同月初旬から同月中旬までの数日間にわたり旅行に出かけ、その間、3歳の長女、稀華(のあ)ちゃんを自宅内に十分な食事を与えることなく単独で放置し、6月13日に 稀華ちゃん は高度脱水症及び飢餓により死亡した。

報道ベースで知りまして、胸を痛めました。

児童虐待防止が叫ばれるなか、どうして、わがまちでもこのような惨事があるのだろうか。

大田区長 松原忠義区長の発言

大田区でも悲しい出来事として重く受け止められまして、
2020年7月21日、松原忠義区長も議会で下記の通り発言。

最初に、先月、3歳児が室内に放置され衰弱死するという悲惨な事件が起こりました。改めてお亡くなりになりましたお子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
区は、区民の皆様が安心し、安全に暮らしていただくことを区政の最重要目標の一つと考えております。そのような中、悲惨な事件が起きてしまったことを大変深刻に受け止めております。
本件は、近隣からも行政からも見えにくい状況の中で発生した事件と捉えております。 区は、未来を担う子どもたちがこのような不幸な出来事により生きる権利を奪われることのないよう、行政内部での情報共有や連携方法など、今回の対応についてしっかりと検証するとともに、引き続き児童相談所や警察、地域などと緊密に連携し、子どもたちを守る取組を進めてまいります。

(大田区議会臨時会、2020年7月21日)

大田区の検証作業と私の私見と

大田区における3歳女児死亡事例検証報告書が、2020年9月24日にリリースされています。
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/kodomo/topics/houkokusyo.html

児童相談所設置を目指す特別区として、主体的に検証したのだと思われます。
本来であれば、検証委員は外部の者で構成することとされており、会議の開催に当たっては、必要に応じて、教育委員会や警察の関係者の参加を求めるものとされています。

参照)厚生労働省「地方公共団体における児童虐待による死亡事例等の検証について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000481609.pdf

後述の通り外部有識者の付帯意見があることから、検証組織の外部性が弱い。
検証された情報に捜査に基づく事実がみられないことから、警察関係の参加も弱い。
そのように感じます。

さて、事件発生後、迅速に、大田区は検証作業を進めました。

本事例に係る大田区子育て世代包括支援センター連絡調整会議開催経過

第1回 6月 25 日 検証の進め方・スケジュール等について
第2回 6月 29 日 事例の概要把握
第3回 7月 14 日 第一章 検証の目的・方法について
第4回 7月 21 日 第二章 事例の概要等について
第5回 8月5日 第三章 行政との接触機会等における課題と対応策について
第6回 8月 14 日 第四章 行政から見えにくい状況への対応について
第7回 8月 27 日 第五章 子育て世代包括支援センターの機能強化策について
第8回 9月1日 検証報告書(案)全体について

見えにくいものを行政としてどのようにしたら把握できるか、
どうすれば支援を必要としている家庭に気づき、
必要な支援を届けることができるのかを
中心に検討を行なった。

大田区における本児への関わりを中心に、初期からの対応全てを検証し、問題点を明らかにするとともに、
改善のための方策を探ることを主としています。

報告書の内容は一般的な記述が多く、当該児童の事例にはあまり踏み込まれてなくて、
問題点が明らかになっていないと感じます。

本事例における行政等との接触機会

0~1歳の時点は他自治体にいたので、大田区との接点はありませんが、
2歳の時点で認証保育園を退園
3歳児検診の未受診
そうした事象は確かにあった。
その際に、大田区が積極的なアプローチを出来たと思う。

認証保育園の退園

認証保育所の管轄は、東京都であるため、児童の通所状況については、区に報告する仕組みになっていない。
本事例も、区へ報告は一切なかった。

対応策として、
区は虐待対応マニュアルを配布し、虐待に対する意識啓発を図っている。
認証保育所の施設長会などの機会を捉え、マニュアルを有効に活用してもらうために趣旨を説明し、連絡体制を強化する。

意識啓発程度でなくて退園児童情報の提供を求める等の具体案に踏み込めないものだろうか?
と思います。

乳幼児健康診査未来所者への対応

地域健康課では健康診査未来所者対応を行なっている。
3歳児であれば3歳10か月を期限に受診勧奨を行ないつつ、居住実態を調査している。健康診査未来所である状況を虐待等のリスクが発生しやすい期間として改めて捉える必要がある。
本事例の場合、未来所者対応の過程において、保育所を退所したという生活状況の変化は把握していたが、これまでの経過で要支援家庭としての認識はなかったため、通常の未来所者として受診勧奨を継続した。

対応策として、
子どもの安全確認の迅速化を図るため、
健康診査未来所者対応の目的を「養育状況確認」とし、未来所者への対応期間を大幅に短縮する。
対象となる乳幼児について、情報がない又は会えない状況であること自体に危機感を持ち、養育状況の把握を確実にするため、職員による直接現認を基本とする。
特に乳幼児へのネグレクトは、短期間で生命の危険が生じることを強く意識し、案件ごとに迅速かつ適切に対応する。
目視又は安全であることの確実な情報が入手できるまで確認を行い、関係機関の協力を積極的に求めていく。

保育園に通ってないことは、把握していたようです。
シングルマザーで保育園を利用してないだなんて、困難さしか感じられない。
そのあたりへの踏み込みは考えなかったのだろうか?
けっこう重要なところなのだが、検証されていないのが、残念。

大田区における3歳女児死亡事例検証報告書に対する外部有識者による付帯意見

実質9ページで構成される本編に加えて、外部有識者の付帯意見が3ページの分量で添付されているのが、目を引きます。 外部有識者の意見が本編ではスルーされたのだろうなと読み取れます。

外部有識者はこちらの3名

福島 富士子 東邦大学看護学部学部長
川松 亮 明星大学 人文学部福祉実践学科教授
馬場 望 弁護士

専門家である外部有識者の意見を取り入れて、行政施策に活かしていくことが本来だと思いますが、検証報告書を早期にまとめておきたい思いもあったのでしょう。
せっかくなので、付帯意見をいくつか紹介しておきます。

母子家庭への経済的支援や母親の就労支援、必要が生じたときにすぐに子どもを安心して預けられる保育園や一時保育の受け皿など、 資源そのものを充実させる施策が求められる。 資源のないまま、窓口となる職員のスキルを向上させれば、職員が板挟みになって疲弊してしまう。

母親がこのような養育状況に至った要因分析は、地域での支援を構築するうえでの大切なヒントがある。本検証では、情報の不足から当該分析は行われてはいないが、今後、本事例の公判が行われた場合、本児の死亡要因に係る重要な情報が得られる可能性があり、区として継続して検討することを期待する。

大田区の子育て支援全体のあり方を検討するうえで、子ども家庭支援センターや要保護児童対策地域協議会につながらなかった理由を検証することも必要である。

母親は児童養護施設を退所した後に上京し、子どもを養育していたとされている。児童養護施設を巣立った若者は、生活や人間関係に悩みを抱えても、頼る人が身近におらず、孤立していることが多いのが実情である。こうした若者が伴走してもらいながら困難を解決していく支援が求められる。
児童養護施設を退所した若者が一人で困難を抱え込まなくてよい社会を創り出すために、大田区としての取り組みを期待したい。

自治体が児童虐待防止にむけてやらなければいけないこと

児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律、2000年) によって、自治体の責務が明記されています。

自治体の責務として、児童虐待の予防及び早期発見、児童の保護及び自立の支援、関係機関の連携など必要な体制の整備、などが定められています。

保育園退園、かつ、乳幼児健康診査未受診者への対応は?

児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(2019年3月19日)では、乳幼児健診未受診者、未就園、不就学等の子どもに関する定期的な安全確認が規定されています。

乳幼児健診未受診や、未就園、不就学等で福祉サービスを利用していないなど、関係機関が確認できていない子どもを市町村において把握し、目視等により状況確認を進める取組について、毎年度、定期的に行う。
国においては、この結果をとりまとめて公表するとともに、必要な支援を行う。

「児童虐待防止対策の抜本的強化について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000496811.pdf

保育園退園、かつ、乳幼児健康診査未受診の子どもの状況を確認することが、まさに、自治体の責務といえます。国に対してどのような報告をあげていたのでしょうか。

そもそも、地域健康課のいう健康診査未来所者対応として「3歳児であれば3歳10か月を期限に受診勧奨」を行なうというのは、近時の児童虐待防止対策を反映したものなのだろうか。
児童虐待が、残念ながら、いつもどこかで発生していそうな大田区の対応方針はもっと徹底されるべきだ。

児童虐待が対処すべき社会課題であるなかで、行政不作為です。

大田区における3歳女児死亡事例検証報告書 の最後は、

地域からも児童虐待の可能性を感知し、区へいち早く知らせてもらえるよう周知・啓発に取り組み、大田区が掲げる「安心してこどもを生み育てられるまちづくり」を目指していく。

と、ふわっと締めくくられています。

自治体の責務として、責任をもって児童虐待の防止に取り組んでもらいたいです。

対処すべき社会課題である児童虐待。
しかも、1人の子どもの命が失われてしまったのだからこそ、真摯な取り組みが求められます。

そうでなければ、 3歳にして亡くなられたのあちゃんが浮かばれません。

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