この記事では 秘密保持契約 と 不正競争防止法 との関係を解説をした後、 秘密保持契約ひな形 と各条文の解説をします。また、おまけで採用時と退職時の誓約書も解説します。
秘密保持契約とは?
秘密保持契約 はその名の通り、当事者間で開示する情報の秘密を保持(維持)するための契約です。機能としては秘密の漏洩を防ぐことはもとより、目的外の秘密の利用を防ぐための予防的機能を持ちます。秘密情報は秘密保持契約を結ばなくとも、その一部を営業秘密として不正競争防止法で保護されます。ただし、保護されるためには要件を満たす必要があり、秘密情報を開示した相手と秘密保持契約を結ばないのはリスクとしか言いようがありません。
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不正競争防止法 と 秘密保持契約 の関係
不正競争防止法では「営業秘密の受領者が不正の利益を得る目的、または開示者に損害を加える目的で営業秘密の利用や開示すること」(不正競争防止法第2条1項7号)を「不正競争」の一つとして定義付けています。ここで保護されているのは「営業秘密」であって、一般的に使われている「秘密情報」全般が保護されるわけではありません。
秘密情報が営業秘密として保護されるには以下の3つの要件を満たす必要があります(不正競争防止法第2条7項)。
- 秘密として管理されている(秘密管理性)
- 情報が事業活動に有用である(有用性)
- 公然と知られていない(非公知性)
特に 1. の秘密管理性は「客観的に管理している状態」であることが必要とされます。秘密保持契約を締結は、ここで言う「客観的に管理している状態」を作り出すことができるため、漏洩等で争いになった時も不正競争防止法の保護下に置かれる可能性が高まります。
※不正競争防止法の条文はおまけに記載します。
秘密保持契約 条文解説
第1条 契約の目的
開示される秘密が目的外で利用されないために、契約の目的をしっかりと定めておくことが重要です。秘密保持契約では何らかの契約や取引を前提として締結するものですので、その何らかの契約や取引を直接書くのがベストでしょう。
テンプレートでは目的を第1項に記載していますが、アレンジ例を下記に記載しますので、ご自身の取引形態に応じて使い分けてください。
○契約締結の検討段階で秘密情報開示する場合
・甲及び乙は、〇〇契約の締結交渉に関して、相手方に対して秘密情報を開示する。
○契約締結後、取引遂行にあたり秘密情報開示する場合
・甲及び乙は、〇〇年〇〇月〇〇日付けの〇〇契約に基づく業務に関して、相手方に対して秘密情報を開示する。
第2条 秘密情報の定義
実際に保護の対象となる秘密情報の範囲を定めておくことはお互いの義務を明確にする上で重要です。第1項の条項は複数パターン考えられますので、ご自身の取引実態に合った条項をご利用ください。
○包括的に秘密情報とする場合
・本契約における秘密情報とは、受領者に開示された、開示者の業務上の一切の情報とする。
○特定の情報を秘密情報とする場合
・本契約における秘密情報とは、開示者が提供した個人情報の情報はすべて秘密情報とする。
・本契約における秘密情報とは、開示者が提供した開発に関わる情報はすべて秘密情報とする。
・本契約における秘密情報とは、開示者が提供した〇〇(イベント名)に関わる情報はすべて秘密情報とする。
○秘密情報を特定する場合
・本契約における秘密情報とは、受領者に開示された、開示者の業務上の情報のうち、開示者が秘密情報として指定したものをいう。
第3条 秘密情報義務
実際に受領者が利用する上でどのような義務を負うのかをしっかりと記載し、受領者に課される義務を明確にすることは、前提の契約や取引を円滑に行う上で重要となります。
受領者に課すべき義務は
- 情報の適正な管理
- 目的外の使用の禁止
- 第三者への開示の禁止
以上の3つとなります。
これにより、秘密保持契約の目的である「秘密の維持」と「目的外の利用の禁止」を達成することができます。
ただし、公的機関から法律上で強制的に開示が求められる場合があるので、公的機関から強制的に開示が求められた場合は開示ができる旨を記載すべきでしょう。具体的な例としては刑事訴訟法第218条を基に、令状によって検察、警察から差押え、操作、又は検証される場合が挙げられます。
第4条 秘密情報の返還
開示する目的が終了した時や、特段の理由で受領者の元に秘密情報がある状態が望ましくなくなった時に、情報が受領者の手元に残らないよう返還又は廃棄すると定めておくことで、秘密情報漏洩のリスクを減らすことができます。
そのため、第4条では第1項、第2項で返還する時期と返還、場合によっては廃棄で済ます等、情報が受領者の手元に残らないよう規定しています。
第3項では返還、廃棄の確約として書類を徴求できるようにしています。これは開示者側の情報管理の面で有用です。
第5条 損害賠償
損害賠償の条項はなくても民法上で相手方に請求できますが、弁護士費用や実費などを請求できることを明らかにするために記載するのも有用です。
相手方との信頼関係を踏まえて記載するかどうか決めるべきですが、判断に困ったときには記載するのが無難でしょう。
第6条 秘密期間
当然のことながら秘密保持契約で期間の始まりと終わりを明確に書くことは重要となります。秘密保持契約の前提となる契約や取引に合わせて期間を設定しましょう。前提となる契約や取引が延長となる場合は秘密保持契約も延長できるよう、記載することも可能です。
○延長を可能とする条項
・本契約の期間は〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日までとする。 ただし、甲乙間の協議の上、必要に応じて契約期間を延長できるものとする。
さらに、前提の契約や取引が終了しても開示した秘密が公になることが望ましくない場合もあります。その場合は「秘密情報は、本契約の終了時からさらに〇年間本契約により秘密として保護されるものとする。」(テンプレートの第2項)の条文を入れることにより、数年間は開示した情報を秘密として維持することができます。
ただし、この契約終了後の効力延長条項は期間が長すぎると、有用性や非公知性が失われるとして合理性のない期間とみなされ無効になる可能性があります。有効とされる期間は秘密情報の性質や公知の状況等によって変化しますが、5年が合理性があるとされた判例がありますので、特段事情がない限り5年にするのが良いでしょう。
※期間についての判例はおまけで記載しています。
第7条 権利の譲渡禁止等
秘密保持契約上で債権譲渡がなされることはあまり想定できませんが、相手方が自社の競合と合併することは、可能性は低いもののありうる事例です。そのため、本条項で合併時の地位承継も承諾が必要と規定し、開示範囲を留めることが重要です。
合併時は場合によっては第4条に基づき、秘密情報の返還や廃棄を求めることも検討に入れるべきでしょう。
第8条 合意管轄
第一審のみは契約によって管轄裁判所を定めておくことができます(民事訴訟法11条)。万が一、紛争が生じた際に自分の有利な管轄裁判所で裁判ができるよう、ご自身の所在地に近い裁判所を指定しましょう。管轄裁判所は訴額が140万以下の場合、簡易裁判所が、140万を超える場合は地方裁判所が管轄裁判所になります。いずれの場合でも対応できるよう、地方裁判所、簡易裁判所ともに条項内に記載しましょう。
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秘密保持契約ひな形
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秘密保持契約書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙間に相互に開示される秘密情報の取扱いに関して、次のとおり契約を締結する。
(目的)
第1条 甲及び乙は、〇〇を目的として、相手方に対して秘密情報を開示する。 (以下、秘密情報を開示する当事者を「開示者」、これを受領する当事者を「受領者」という。)
(秘密情報)
第2条 本契約における秘密情報とは、受領者に開示された、開示者の業務上の一切の情報とする。
2 前項にかかわらず、次の各号の一に該当する情報は、本契約における秘密情報として取り扱わないものとする。
(1) 開示の時、既に公知であった情報
(2) 開示がされた後、受領者の責めに帰すべき事由によらず、公知となった情報
(3) 開示の時に既に受領者が保有していた情報
(4) 正当に開示する権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に入手した情報
(5) 開示者から開示された秘密情報によることなく、受領者が独自に開発した情報
(秘密保持義務)
第3条 受領者は、善良な管理者の注意をもって秘密情報を管理する。
2 受領者は開示者から提供された秘密情報を第1条の目的以外に使用してはならない。
3 受領者は書面による開示者の承諾を事前に書面で得たときを除き、秘密情報を第三者に対して開示してはならない。ただし、受領者は、国、地方公共団体、裁判所その他これらに準ずる機関から法令上の根拠に基づき秘密情報の開示を義務付けられた場合はこの限りではない
(秘密情報の返還)
第4条 開示者から開示を受けた秘密情報は、第1条に定める目的が終了した時、若しくは本契約が終了した時、又は開示者の請求がある場合には、直ちに相手方に返還する。
2 前項に定める場合において、受領者は開示者の許諾得た場合には秘密情報を返還せずに、廃棄することができる。
3 第1項、第2項に基づき秘密情報の返還又は廃棄を行い、開示者が求めた場合は、いつでも受領者は返還又は廃棄を行った旨の確約書を開示者に交付しなければならない。
(損害賠償)
第5条 開示者は、本契約に違反し、又はその役員・従業者、元役員・元従業者が本契約に抵触した場合は、相手方が求める必要な措置を直ちに講じるとともに、相手方に生じた損害(弁護士費用、及びその他の実費を含むがこれに限らない。)を賠償しなければならない。
(秘密期間)
第6条 本契約の期間は〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日までとする。
2 秘密情報は、本契約の終了時からさらに〇年間本契約により秘密として保護されるものとする。
(権利の譲渡禁止等)
第7条 甲及び乙は、事前の書面による相手方の承諾を得ることなく、本契約上の地位及び本契約により生じた権利義務の全部又は一部を第三者に譲渡し、又は承継(合併等の包括承継を含む。)させない。
(合意管轄)
第8条 甲及び乙は本契約に関して裁判上の紛争が生じたときは、訴額に応じて東京簡易裁判所又は東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。
以上の合意の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。
年 月 日
甲 氏名
住所 ㊞
乙 氏名
住所 ㊞
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業務委託契約書 nda について動画解説
採用時誓約書
採用時誓約書とは?
採用時の秘密情報に関する誓約書は、社内の情報管理規定を補強する意味で重要です。
特に重要な事項を記載することで、従業員の規範意識も喚起させられますので、形式的に書類のやりとりをするのではなく、従業員には内容を理解してもらったうえで誓約書を取り交わしましょう。
第1条 秘密保持の誓約
秘密情報を無断で開示させないよう規定すると同時に、テンプレートの第1号~第7号のように、実際に開示を禁止する秘密情報を例示することによってより規範力を増すことができます。基本的にはテンプレートの条文をそのまま使えば問題ありませんが、雇用側の事業にとってコアな情報が他にある場合は付け加えることも検討の余地があります。
○例示する秘密情報の例
・イベントの開催日、出演者、開催地等の未公開の情報
・〇〇の調査結果に関する情報
第2条(従前勤務先の秘密情報)
前職の情報を不正に持ち込むことは不正競争防止法で禁止されています。昨今でも逮捕者が出たりと問題になることが多いので、前職の情報は開示させないよう規定を定めておきましょう。
第3条(秘密情報の帰属)
会社の業務で取得した秘密情報は当然会社に帰属します。第3条では確認の意味を含めて秘密情報が会社に帰属し、従業員には帰属しないことを記載しています。
第4条(退職後の秘密情報)
第2条の解説でも書いた通り、前職の情報を不正に持ち込むことは不正競争防止法で禁止されています。退職後に自社の情報を不正に利用されることがないよう、誓約書に記載しましょう。
第5条(損害賠償)
秘密情報の漏洩など誓約書に記載の事項に違反した場合は当然、民法の不法行為などで損害賠償を請求することができます。ただ、条文として記載することにより、従業員がより規範意識を持ってもらえることが期待できます。
採用時誓約書ひな形
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誓約書
私は、今般、貴社に採用されるにあたり、以下記載の事項を遵守することを誓約いたします。
第1条(秘密保持の誓約)
私は貴社の就業規則及び貴社の秘密情報管理規程を遵守し、次に示される貴社の秘密情報について、貴社の許可なく、不正に開示又は不正に使用しないことを誓約します。
① 製品の検討、開発、製造、販売、技術資料等にかかわる情報
② 製品等の仕入価格及び価格設定等に関する情報
③ 財務、予算、人事及び経営に関する情報
④ 各種マニュアル、顧客名簿、販売資料、各種調査情報
⑤ 取引先に関する情報、取引先から受領した秘密情報
⑥ 上司または秘密情報管理責任者によって秘密情報に指定された情報
⑦ 以上のほか、貴社にかかわる、又は貴社が保有する非公開の一切の情報
第2条(従前勤務先の秘密情報)
私は他人の秘密情報につき、次のとおり誓約します。
① 従前の勤務先等から不正に取得したことはありません。
② 貴社の事業に使用し、又は貴社の役員・従業者に開示しません。
③ 貴社に送信し、又はその記録、記載された媒体を、貴社に持ち込みません。
第3条(秘密情報の帰属)
貴社の秘密情報は、私が形成、創出したものであっても、貴社の業務に関連して作成したものであり、当該秘密情報は貴社に帰属することを確認します。また、その秘密情報が私に帰属する旨の主張をしません。
第4条(退職後の秘密情報)
私は、退職後といえども、秘密情報を開示もしくは使用しないことを誓約します。
第5条(損害賠償)
前各項の規定に違反した場合には、貴社に生じた損害に対してすべての賠償の責めを負うことを誓約します。
年 月 日
株式会社〇〇 御中
住所:
氏名:
従業員署名
住所:
氏名:
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退職時誓約書
退職時誓約書とは?
退職時誓約書は退職後に自社の秘密情報を悪用されることがないよう、しっかり締結することが重要です。 もちろん、労働者側が不利だと感じるような内容であれば、サインを拒否することも可能です。採用時誓約書と同様、従業員に内容を理解してもらったうえで、書類を取り交わしましょう。
第1条 秘密保持の誓約
基本的には採用時誓約書第1条と同じです。秘密情報を無断で開示させないよう規定し、実際に開示を禁止する秘密情報を例示しましょう。
第2条 秘密情報の帰属
採用時誓約書の第3条と同じです。
第3条 秘密情報の返還
退社にあたり、従業員が保有している資料、デバイスに入っている秘密情報を返還してもらいましょう。返還に際し、返還する物品の一覧表を作ることで返還の抜け漏れや従業員による持ち出しを実効的に防ぐことができます。退職者が出た場合は一覧表を作ることも一考に入れてください。
第4条(損害賠償)
採用時誓約書の第5条と同じです。
第5条(契約の期間、終了)
秘密保持契約と同様に契約の存続期間が長すぎる場合、契約期間に合理性がないとされ無効とされる可能性があります。契約期間はその従業員が携わっていた秘密情報の機密度に応じて変更しましょう。期間設定に困った場合は上記の判例通り5年を基準にするのがよいでしょう。
退職時誓約書ひな形
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誓約書
私は、今般、貴社を退職するに際し、本誓約書記載の事項を遵守することを誓約いたします。
第1条(秘密保持の誓約)
私は貴社の就業規則及び貴社の秘密情報管理規程を遵守し、次に示される貴社の秘密情報について、貴社の許可なく、不正に開示又は不正に使用しないことを誓約します。
① 製品の検討、開発、製造、販売、技術資料等にかかわる情報
② 製品等の仕入価格及び価格設定等に関する情報
③ 財務、予算、人事及び経営に関する情報
④ 各種マニュアル、顧客名簿、販売資料、各種調査情報
⑤ 取引先に関する情報、取引先から受領した秘密情報
⑥ 上司または秘密情報管理責任者によって秘密情報に指定された情報
⑦ 以上のほか、貴社にかかわる、又は貴社が保有する非公開の一切の情報
第2条(秘密情報の帰属)
貴社の秘密情報は、私が形成、創出したものであっても、貴社の業務に関連して作成したものであり、当該秘密情報は貴社に帰属することを確認します。また、その秘密情報が私に帰属する旨の主張をしません。
第3条(秘密情報の返還)
私は、貴社から開示、提供された秘密情報等を貴社に返還し、自ら保持していないことを誓約します。
第4条(損害賠償)
前各項の規定に違反した場合には、貴社に生じた損害に対してすべての賠償の責めを負うことを誓約します。
第5条(契約の期間、終了)
本契約は、○○年間有効とします。ただし、第1条各号の秘密情報が公知となった場合は、その時点をもって、当該公知となった秘密情報についての本契約第1条の義務は終了することとします。
年 月 日
株式会社〇〇 御中
住所:
氏名:
従業員署名
住所:
氏名:
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ご参考
行政書士の秘密
行政書士は行政書士法第12条、19条の3で秘密保持を課されています。これは違反した際に刑事罰に課される(行政書士法第22条)ため、一般的な守秘義務よりも重く設定されています。行政書士にご相談いただく内容は、身辺上の話などセンシティブなものにも及ぶ場合もありますが、上記通り強い守秘義務を課されているため、安心してご相談ください。
行政書士法
第12条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。
第19条の3 行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者でなくなつた後も、また同様とする。
第22条 第十二条又は第十九条の三の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
不正競争防止法条文
第2条1項7号 営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
第2条6項 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
第3条1項 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2項 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。
第4条 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密又は限定提供データを使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。
秘密保持契約に関する判例
大阪地方裁判所平成20年8月28日判決より引用
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秘密保持に関する条項が本件開発委託契約終了後も5年間その効力を維持するとする趣旨は,本件開発委託契約が終 了してもこれまでの開発業務の遂行に当たり蓄積された種々のノウハウ等 の営業秘密に関して契約終了後も相互にその秘密を保持すべき義務を一定 期間存続させ,もって上記営業秘密の保有者の利益を保護することにある と解される。
もちろん,かかる秘密保持条項を契約終了とともに失効させたとしても,これらの営業秘密を目的外に使用・開示等をする行為は,多くの場合,不正競争防止法2条1項7号等の不正競争行為に該当すると解されるが,営業秘密性の立証が困難であり,また,繁雑である場合もあり 得るから,本件開発委託契約の終了後も秘密保持条項の効力を維持するこ とが,同契約の契約当事者(とりわけこの種の営業秘密を保有する立場に ある原告)の利益に適うものと認められる。したがって,本件開発委託契 約終了後も一定期間その効力を存続させることには合理性があると認めら れる(他面において,その営業秘密に係るノウハウ等が陳腐化し,一定期間経過後は有用性や非公知性が失われる場合が多いと考えられるから,あまりに長期間にわたり当事者に秘密保持義務を負わせるのも合理性に欠け るものというべきであって,その期間を5年間とした本件開発委託契約の 秘密保持条項の存続規定はその点でも合理的であると解される。)。
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