おととし3月(2016.3.16)、生後6か月の女児が、大田区の24時間型ベビーホテルで死亡する悲しい事件が起きました。
都の検証委員会(東京都教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的検証委員会)が詳細な報告書(東京都教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的検証委員会報告書)をまとめています。
地元自治体の政治家として、このような事故が再び起こることのないように努めてまいります。
東京・大田区のベビーホテルで生後6か月の女の子が死亡した事故について、都の検証委員会は「当時、保育資格をもつ職員がいなかった」などとする報告書をまとめました。(2018.3.28)
この問題はおととし3月、生後6か月の山本心菜ちゃんが、大田区の24時間型ベビーホテル「蒲田子供の家」で死亡したものです。
東京都の検証委員会は報告書をまとめ、心菜ちゃんの死因は気管支炎の可能性が高いとする警察からの情報があるとしたうえで、当時、担当していた職員2人はいずれも保育資格がなかったと指摘しました。
また、都が毎年のように改善指導したにもかかわらず事故が起きたことから、都と区市町村が積極的に連携して、指導を強化することを提言しました。
老舗の個人経営のベビーホテルで発生した死亡事故
都の報告書では
1978年にオープンした24時間ベビーホテルとして、園長個人が長年経営されてきたことがわかる。
建物は園長の自己所有であり、2階が当該ベビーホテル、3・4階は園長及び保育従事職員の住まいとなっていた。
夜間の主な利用者
夜間の業務に従事する保護者のほか、ひとり親家庭、貧困家庭、要支援家庭など、保育に限定されない家庭支援や養育支援、就労支援などの様々な福祉的なニーズのある利用者も多いことが特徴とされている。
事故後、在園時の転園先確保に大田区も協力して、2017年3月末には施設閉鎖されました。
たび重なる行政指導がおこなわれていた
当該ベビーホテルには下表の通り行政の指導監査が行われてきました。
( C評価の方が、B評価より重い評価です。)
国の通知(「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」(2001年3月29日 雇児保発第177号))では、立入調査を年1回 以上行うことを原則と示している。
都においては、立入調査を補完する形で、2016年度から、認可外保育施設に対する巡回指導チームを編成し、全ての認可外保育施設に年1回巡回して、指導・助言できる体制を整備した。
もちろん、都の権限が区に移譲されるため、区がやらなければならないこととなる。
保護者及び代理人弁護士からは、
当該ベビーホテルが何年にもわたり、有資格者不在や1人保育など、複数の指導監督基準に違反している状態で事業を継続していたことについて、
都による改善勧告や事業停止命令などの権限行使が行われていれば、本件死亡事故は防げた可能性があったとの意見があった。
とはいえ、事業停止してしまうと、利用者が困るわけで、非合法のサービスが出てくる可能性もある。
インターネットで探した個人のベビーシッターでの、死亡事故も話題になったことがあります。
そこで、保育施設などに対する指導検査結果を都のホームページで公表していることも利用者は参考にしていただきたいものです。
http://www2.fukushihoken.metro.tokyo.jp/houjin/DBHP_Page2.htm
行政や施設側の取り組みの必要ながら、自分の大切な子どもを預ける先は自分で決定するべきことです。
こどもの死因とベビーホテル内の連絡体制の不備
都の報告書では死因は断定していないものの、
女児は2月に風邪(母親がインフルエンザを発症)の症状があったが、主治医の診立てによると3月には治っていた。
しかしながら、園においては、病後であることに配慮した保育を行うことが望ましかった。
病後の健康状態について、日々の保育中の様子などを詳細に記録し、全職員で共有するような取組が行われるべきであった。
そもそも、保育課程、指導計画がなく、オムツ交換や授乳の時間、睡眠中の確認結果や確認した時間などの記録がなく、園長の記憶で管理し、保護者に口頭で伝える運用を行っていた。
元保育従事職員からのヒアリングで、当該園においては、保育日誌のようなものは無く、連絡帳は昼間の児童のみで、夜の児童は園長と保護者が口頭で情報共有していたのみであったことを確認。
職員の経験不足が指摘される事業所内保育所での死亡事故
厚生労働省の教育・保育施設等における事故報告集計によれば
2016年死亡事故 13件、(認可保育所5件、保育ママ1件、認可外7件)
2015年死亡事故 14件、(認定こども園1件、認可保育所2件、小規模保育所1件、認証保育所1件、認可外9件)
東京都内で、2015年の死亡事件は発生していないが、
2016年は認可外保育施設で2件の死亡事故が発生。
うち、1件が上述の大田区のベビーホテル。
もう、1件が中央区で2016年3月に事業所内保育施設で発生。
中央区の死亡事例も簡単にまとめておきます。
1歳2か月の男児が死亡したもの。
当該児は、午睡の途中で目覚めて泣くことがあるため、他の児童が午睡をしている部屋の隣の部屋で1人だけで寝かされており、事故の当日も、隣の部屋に1人で、保育従事職員が当該児をうつぶせ寝にして寝かしつけた。
事故発生当時、当該園では、職員配置基準は満たしていた。
法人本部(*)による園のサポート体制や職員の専門性の向上を支える体制が不十分であるなど、保育の質が確保されていなかったといえます。
*受託企業は、株式会社アルファコーポレーション
施設長の経験不足
施設長は保育士資格を独学で取得。実習経験がないまま、当該法人が運営する保育所での1年3か月の保育従事の実績しかなかったため、本人は施設長就任への打診を断った。
(保育士資格はペーパー試験ですから、資格があれば大丈夫というものではないですね。)
本部からサポートがあると言われ、引き受けたものの、施設長となるには不安を感じていた。施設長に対する研修は行われていたが、内容は虐待やパワハラなどに関する研修が多かった。
その他の常勤職員についても、当該園での勤務実績が1年から3年程度で通算の保育経験でも1年から4年程度。
職員が特に担当を決めずに全園児にかかわるという体制、
SIDSや窒息のリスクに関する知識、応急処置に関する知識・経験不足
といった問題も明らかにされています。
施設所在自治体である中央区に対するヒアリングによると、
私立認可保育所や東京都認証保育所に比べて、その他の認可外保育施設に対して関与の仕組みが無く、区が把握出来るのは都への届出情報のみである。認可外保育施設は、児童福祉法に基づき、都道府県が指導監督を行うこととされており、また、特に、事業所内保育施設については、地域枠の設定が無く、利用者が区民以外の従業員に限定されているケースもあるため、現行の仕組みで区市町村が関与していくには一定のハードルがある、とのことであった。
事業所内保育所は、内閣府主導で整備されてるので、開設にあたっての自治体の関与はありません。
その後の運営に関与するにしても、区民サービスではない、事業所内保育に口を挟むべきなのでしょうか。
事業所内保育所を設置する事業者には、ふわっとした福利厚生という意識じゃなくて、こどもの生命を預かっている緊張感が求められます。
認可外保育施設の利用への自治体の今後の対応については
認可外保育施設といえども、そこに子どもの生命が預けられているのだから、
自治体も何らかの介入は必要です。
指導検査結果が都のホームページで公表されていますから、利用者は参考にしていただきたいものです。
自分の子どもの生命を預けてよいものか、施設や行政に事前に確認した上で、利用を決定しましょう。
立入調査には、行政スタッフの確保も必要です。
行政がこうした保育施設が安全であるかをチェックすることは、引き続き、今後の重要な課題です。
24時間保育や夜間保育の運営についても、
全ての子どもたちに同じような育ちを保障していくためには、
重要な課題となりそうです。
ニーズ量の把握も必要です。