相続人同士で遺産分割協議を行い遺産分割を無事に終えた数年後、 遺言書 が発見された時にどのような扱いとなるのでしょうか?
今回は遺産分割後に起こる遺言書を巡った様々なパターンについて対処法を紹介します。
1.遺言書 の時効
そもそも遺言書に時効はあるのでしょうか?
結論を言うと遺言書に時効はありません。
10年後、20年後に遺言書が発見された場合でも遺言者の意思は無効な内容の遺言書でない限りは必ず尊重されます。
そのため遺産分割協議を行う前に遺言書を探す際は、必ず相続人同士で協力しながら隅々まで念入りに探すことをおすすめします。
2.遺産分割後に 遺言書 が発見された場合
遺産分割後に遺言書が発見された場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
大原則として相続人全員の合意の元で行われた遺産分割よりも、遺言者が残した遺言書の内容が優先して効力を発揮します。
そのため、遺言書が新たに発見された場合には再度相続人全員で内容を確認し、遺産の再分割を行うかどうかを決定する必要があります。
相続人全員が遺言書の内容を確認した上で、先に行われた遺産分割に改めて合意する場合には無理に再分割を行うことなく現状維持が可能となります。
しかし、遺言書の内容を確認した後に、改めて遺言書に沿った遺産分割を希望する相続人が1人でもいる場合には遺産の再分割協議が必要となります。
3.必ず遺産の再分割が必要となる場合
相続人全員が先に行われた遺産分割の内容に改めて合意をしていても、必ず再分割協議が必要となる場合が大きく2つあります。
- 遺言書の中で「相続人以外への遺贈」や「子の認知」など、相続人以外に新たな相続権利者が記載されていた場合です。
この場合、新たな相続権利者を交えて遺留分などに関しても考慮をしながら遺産の再分割を改めて行う必要があります。 - 遺言書の中で「この人には財産を相続させたくない」という推定相続人の排除が記載されていた場合です。
先に行われた遺産分割協議に対象相続人が参加し遺産の一部を受け取っていた場合、
対象相続人を除いた全員で改めて再分割協議を行う必要があります。
4. 複数の 遺言書 が発見された場合
遺言書はいつでも何度でも自由に書き直しや撤回を行うことが可能です。そのため、遺言書が見つかっていて無事に遺産分割を終えた後、日付の新しい新たな遺言書が発見される場合もあります。
このような場合には遺言書の内容が有効なものである限り、作成日の新しいものが有効とされます。
また自筆証書遺言と公正証書遺言の2通が出てきた場合、2通とも内容が有効である限りは遺言の種類に関係なく作成日の新しいものが有効とされます。
5.遺産の再分割を行う際の注意点
遺産の再分割を行う際に注意したいのが「第三者への売却」と「税金」です。
例えば先に行われた遺産分割で得た不動産を第三者に売却した後に遺言書が発見され遺産の再分割となった場合、第三者への不動産売却を取り消すことはできません。このように相続とは無関係の第三者が絡む契約には効力を発揮しないことを知っておきましょう。
また税制上では再分割の際には相続時と違う扱いとなることにも注意が必要です。相続時には「相続税」が発生しますが、その後遺産の再分割を行う際には元々払った相続税は返金されません。さらにこれに加えて再分割で行われる財産の移動については贈与とみなされ「贈与税」が発生する場合があります。また不動産には「登記費用」や「不動産所得税」が発生する場合があります。そのため遺産の再分割については税制対策についても考慮した上で決定をすることをおすすめします。
遺言書が新たに発見された場合に再分割は可能ですが、実際には一度それぞれの相続人が手にした財産を再整理して再分割するという大きな手間と時間を要します。
再分割を行うかについては相続人全員で慎重に検討を行いましょう。