AI契約書 関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について契約書審査やナレッジマネジメントにおけるAIの有用性及び民間企業の法務部門におけるデジタル技術の活用拡大の重要性に鑑み、法務省において、AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について、予測可能性を可能な限り高めるため、見解が示されたので、備忘のため整理しておきます。
AI契約書 作成サービスは非弁行為にあたるか?
AI契約書 が、弁護士法第72条で禁止される、いわゆる非弁行為に該当するか否かについては、それが罰則の構成要件を定めたものである以上、個別の事件における具体的な事実関係に基づき、同条の趣旨(最高裁判所昭和46年7月14日大法廷判決・刑集第25巻5号690頁)に照らして判断されるべき事柄であり、同条の解釈・適用は、最終的には裁判所の判断に委ねられるものである。
AI等を用いて契約書等の作成・審査・管理業務を一部自動化することにより支援するサービス(以下「サービス」)の提供と同条との関係についての考え方を以下に示した。サービスが、下記1から3までに記載した「報酬を得る目的」、「訴訟事件…その他一般の法律事件」、「鑑定…その他の法律事務」の各要件のいずれかに該当しない場合には、サービスの提供は、弁護士法第72条に違反しない。
サービスが下記1から3までの要件のいずれにも該当する場合であっても、下記4に該当する場合には、サービスの提供は、弁護士法第72条に違反しない。
生成AIを用いたサービスの提供と同条との関係についても、原則として同様の枠組みで判断されるべきもの。
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士法
1 弁護士法第72条の「報酬を得る目的」にいう「報酬」とは、
法律事件に関し、法律事務取扱のための役務に対して支払われる対価をいうとされるところ、「報酬」には、現金に限らず、物品や供応を受けることも含み、額の多少は問わず、第三者から受け取る場合も含むと考えられる。
「報酬」と認められるためには、利益供与とサービスの提供との間に対価関係が認められる必要があると考えられる。
その上で、 (1) 例えば、事業者が、利用料等一切の利益供与を受けることなくサービスを提供する場合には、通常、「報酬を得る目的」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(2) 他方で、一見すると「報酬」を得ることなくサービスを提供する外観を有する場合であっても、サービスを提供するに当たり、
例えば、
ア 当該事業者が提供する他の有償サービスを契約するよう誘導するとき
イ 第三者が提供する有償サービスを利用するよう誘導するとともに、サービスの利用者が当該第三者が提供する有償サービスを利用した際に当該第三者から当該事業者に対して金銭等が支払われるとき
ウ 顧問料・サブスクリプション利用料・会費等の名目を問わず金銭等を支払って利用資格を得たものに対してのみサービスを提供するとき
など、サービスの運営形態、サービスと他の有償サービスとの関係、利用者・事業者・当該有償サービスの提供者・金銭等の支払主体等の関係者相互間の関係、支払われる金銭等の性質や支払の目的等諸般の事情を考慮し、金銭支払等の利益供与とサービスの提供との間に実質的に対価関係が認められるときには、「報酬を得る目的」に該当し得ると考えられる。
2 弁護士法第72条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関し、
一般に、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、新たな権利義務関係の発生する案件をいうとされるところ、同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられる。
「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。
(1) 例えば、取引当事者間で紛争が生じた後に、当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合には、法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものとして「事件性」が認められることから、このような場合の契約書等の作成についてサービスを提供するときには、「その他一般の法律事件」に該当し得ると考えられる。
(2) 他方で、例えば、親子会社やグループ会社間において従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合や、継続的取引の基本となる契約を締結している会社間において特段の紛争なく当該基本契約に基づき従前同様の物品を調達する契約を締結する場合には、いわゆる「事件性」を認め難いことが通常と考えられ、その契約関係を明らかにするために契約書等を作成する場合にサービスを提供するときには、通常、「その他一般の法律事件」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(3) もとより、上記(1)、(2)以外の場合であって、いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意しつつ、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して、「事件性」が判断されるべきものと考えられる。
3 弁護士法第72条の「鑑定…その他の法律事務」にいう「鑑定」とは、
法律上の専門的知識に基づき法律的見解を述べることをいうとされ、「その他の法律事務」とは、法律上の効果を発生、変更等する事項の処理をいうとされるところ、これらの点については、サービスにおいて提供される具体的な機能や利用者に対する表示内容から判断されるべきものと考えられる。
以下では、サービスを、便宜上、「(1) 契約書等の作成業務を支援するサービス」、「(2) 契約書等の審査業務を支援するサービス」及び「(3) 契約書等の管理業務を支援するサービス」に分類して記載する。
(1) 契約書等の作成業務を支援するサービスについて
ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、以下の機能・表示が認められる場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。
(ア) その利用者による非定型的な入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示される場合 (イ) その利用者が、あらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力し又は選択肢から希望する項目を選択する場合であっても、極めて詳細な項目、選択肢が設定されることにより、実質的には利用者による非定型的な入力がされ、当該入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示されるものと認められる場合
イ 他方で、例えば、同システムにおいて、その利用者があらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力しまたは選択肢から希望する項目を選択することにより、その結果に従って、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した複数の契約書等のひな形から特定のひな形が選別されてそのまま表示されるか、複数のひな形の中から特定のひな形が選別された上で、利用者が入力した内容や選択した選択肢の内容が当該選別されたひな形に反映されることで、当該選別されたひな形の内容が変更されて表示されるにとどまる場合(上記ア(イ)の場合と認められるときを除く。)、
同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(2) 契約書等の審査業務を支援するサービスについて
ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、以下の機能・表示が認められる場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。
(ア) 審査対象となる契約書等の記載内容について、個別の事案に応じた法的リスクの有無やその程度が表示される場合
(イ) 当該契約書等の記載内容について、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な修正案が表示される場合
イ 他方で、例えば、同システムにおいて、以下の機能・表示にとどまる場合、同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(ア) 審査対象となる契約書等の記載内容と、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容との間で相違する部分がある場合に、当該相違部分が、その字句の意味内容と無関係に表示されるにとどまるとき
(イ) 審査対象となる契約書等の記載内容と、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容との間で、法的効果の類似性と無関係に、両者の言語的な意味内容の類似性のみに着目し、両者の記載内容に当該類似性が認められる場合に、当該類似部分が表示されるにとどまるとき
(ウ) 審査対象となる契約書等にある記載内容について、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した契約書等のひな形の記載内容又はチェックリストの文言と一致する場合や、ひな形の記載内容又はチェックリストの文言との言語的な意味内容の類似性が認められる場合において、
・ 当該契約書等のひな形又はチェックリストにおいて一致又は類似する条項・文言が個別の修正を行わずに表示されるにとどまるとき
・ 同システム上で当該ひな形又はチェックリストと紐付けられた一般的な契約書等の条項例又は一般的な解説や裁判例等が、審査対象となる契約書等の記載内容に応じた個別の修正を行わずに表示されるにとどまるとき
・ 同システム上で当該ひな形又はチェックリストと紐付けられた一般的な契約書等の条項例又は一般的な解説が、審査対象となる契約書等の記載内容の言語的な意味内容のみに着目して修正されて表示されるにとどまるとき
(3) 契約書等の管理業務を支援するサービスについて
ア 例えば、同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、管理対象となる契約書等の記載内容について、随時自動的に、個別の事案に応じた法的リスクの有無やその程度が表示される場合やそれを踏まえた個別の法的対応の必要性が表示される場合には、同サービスの提供は、「鑑定…その他の法律事務」に該当し得る。
イ 他方で、例えば、同システムにおいて、以下の機能・表示にとどまる場合、同サービスの提供は、通常、「鑑定…その他の法律事務」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(ア) 管理対象となる契約書等について、契約関係者、契約日、履行期日、契約更新日、自動更新の有無、契約金額その他の当該契約書等上の文言に応じて分類・表示されるにとどまる場合
(イ) 管理対象となる契約書等について、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ登録した一定の時期や条件を満たした際に、当該事実とともに、同システムの利用者が契約書等に関してあらかじめ登録した留意事項等が表示されるにとどまる場合
4 サービスが、上記1から3までの「報酬を得る目的」、「訴訟事件…その他一般の法律事件」及び「鑑定…その他の法律事務」の要件のいずれにも該当する場合であっても、
例えば、利用者を以下のいずれかとしてサービスを提供する場合には、通常、弁護士法第72条に違反しないと考えられる。
(1) サービスを弁護士に提供する場合であって、当該弁護士がその業務として法律事務を行うに当たり、当該弁護士が、サービスを利用した結果も踏まえて審査対象となる契約書等を自ら精査し、必要に応じて自ら修正を行う方法でサービスを利用するとき
(2) サービスを弁護士以外のものに提供する場合であって、当該提供先が当事者となっている契約についてサービスを利用するに当たり、当該提供先において職員となり、取締役、理事その他の役員となっている弁護士が上記(1)と同等の方法で本件サービスを利用するとき
参考:法務省
行政書士による AI契約書 業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係
さて、行政書士が AI契約書 業務支援サービスを展開する場合、非弁行為となる可能性はあるか。岡高志行政書士事務所でも 遺言書AI VISA de AI と関連事業を展開しております。
行政書士法では下記の通り定められています。
第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
行政書士法
「官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類」
主に、許認可等に関する書類の作成をいいます。
「権利義務に関する書類」
契約書や協議書、念書、示談書など、権利・義務の発生、存続、変更、消滅に係る書類をいいます。
主なものとしては、遺産分割協議書、各種契約書(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇傭、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)、念書、示談書、協議書、内容証明、告訴状、告発状、嘆願書、請願書、陳情書、上申書、始末書、定款等があります。
「事実証明に関する書類」
社会的に証明を要する事項について自己を含む適任者が自ら証明するために作成する文書(証明書の類)を指します。
主なものとしては、実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)、各種議事録、会計帳簿、申述書等があります。
参考:東京都行政書士会
契約書作成は行政書士業務
AI以前に、契約書作成は本来的な行政書士業務です。より多くのお客様の利便のために、AIも活用して契約書作成業務を展開してまいります。
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