2026年9月15日、GO、Waymo、日本交通の3社が、2027年中に東京で自動運転レベル4による完全無人 自動運転タクシー 商用運行を目指すと発表しました。テレ朝ニュース2026.9.16
現在は日本交通の乗務員が同乗して東京都内で自動走行試験を行っていますが、今後、必要な許認可を取得した上で、一般利用者を乗せた完全無人運行へ移行する計画です。まず少数の車両から開始し、段階的に100台規模まで広げるとされています。
羽田空港がある大田区の区長を目指す立場から、大田区の交通政策という視点から考えると、
例えば「羽田空港―JR蒲田駅」を無人タクシーで結ぶことはできないだろうか。
という発想が出てきます。
ただし、自動運転は「新技術なのだから、とりあえず走らせてみよう」というものではありません。
道路交通法には、すでにレベル4の無人運行を前提とした許可制度が設けられています。
大田区で導入を考えるとしても、この法制度に沿って、安全を確認しながら進めることが大前提になります。
自動運転タクシー にも、きちんと「許可」が必要
レベル4の無人運転は、道路交通法上「特定自動運行」として制度化されています。
道路交通法第75条の12第1項は、次のように規定しています。
「特定自動運行を行おうとする者は、特定自動運行を行おうとする場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。」
したがって、大田区内で無人タクシーを走らせる場合も、
「自動運転車だから自由に公道を走れる」わけではありません。
東京都内であれば、道路交通法に基づく公安委員会の許可を受け、特定自動運行計画に従って運行する必要があります。
この制度が面白いのは、単に「車両が安全か」を審査するだけではないことです。
申請では、
- 使用する自動車
- 自動運行装置の使用条件
- 運行する場所や経路
- 運行の時間帯
- 遠隔監視を行う場合の体制
- 交通事故が発生した場合の対応
などを含む「特定自動運行計画」が審査されます。
さらに道路交通法施行規則では、気象状況や道路構造、他の交通への影響なども計画上の事項として考慮されます。
つまり、
「この自動運転車は走れますか」ではなく、「この車を、この道路で、この条件で、この管理体制によって走らせて安全ですか」
という許可制度であって、非常に合理的な制度設計だと思います。
羽田空港―JR蒲田駅 という考え方
自動運転レベル4は、最初から日本中すべての道路を自由に走れることを意味するものではありません。
自動運行装置には「使用条件」があります。
道路条件、速度、天候、時間帯など一定の条件の中で自動運転を成立させるという考え方です。国土交通省も、レベル4について走行環境条件やリスクシナリオを踏まえて車両の安全性を確認する制度を整備しています。
そこで大田区を考えます。
いきなり、
「大田区内ならどこへでも無人タクシーで行けます」
というサービスを考える必要はありません。
むしろ最初は、
羽田空港―JR蒲田駅
のように需要が想定しやすい区間を候補として、限定的な実証を検討する方が制度になじみます。
大田区自身も交通政策基本計画で、羽田空港利用者の増加を見据え、空港アクセスの改善や観光交通、外国人来訪者の交通利便性向上を交通政策上の課題として掲げています。
羽田空港では、
旅行客、外国人観光客、ビジネス客、空港関係者、早朝・深夜の利用者、大きな荷物を持った利用者など、
一般住宅地とは異なる交通需要があります。
その一部を自動運転が担えるか。
これは検討する価値のあるテーマです。
大田区長が許可できる?
区長が、「大田区で無人タクシーを走らせよう」と決めただけで、無人タクシーを運行できるわけではありません。
道路交通法上の特定自動運行を許可するのは公安委員会です。
さらに商用タクシーとして旅客を有償で運ぶのであれば、道路運送法上の旅客自動車運送事業としての規制も受けます。
自動運転車そのものについても、道路運送車両法に基づく車両安全の制度があります。
つまり、
国土交通行政と警察行政の両方にまたがる制度
です。
では自治体に何ができるのか。
私は、自治体の役割は「許可を出すこと」ではなく、
実証フィールドをつくり、国・警察・事業者・道路管理者・地域との調整を行うこと
にあります。
例えば大田区から、
「羽田空港周辺や蒲田周辺に、このような交通需要がある」
「この経路なら社会的な効果を検証できる」
という実証モデルを提示することは考えられます。
その上で、実際の許認可は法律に定められた行政庁が審査する。
地方自治体と許認可行政の役割を混同しないことが重要です。
自動運転タクシー でも、人間による安全管理はなくならない
特定自動運行についてもう一つ重要なのが、道路交通法第75条の19以下です。
特定自動運行を行う事業者は「特定自動運行主任者」を指定しなければなりません。
遠隔監視によって運行する場合、道路交通法第75条の20では、車両周辺の道路・交通状況や車両の状況を映像・音声で確認できる装置を備え、そこに特定自動運行主任者を配置する仕組みが規定されています。
つまり無人タクシーとは、
「誰も管理していない車」ではありません。
運転席に人はいない。
しかし、運行自体は組織的に管理される。
自動運転システムに異常があった場合には運行を終了させる措置も求められています。
ここは、住民の安心を考える上でも重要です。
羽田―蒲田で考えるなら「事故のとき誰が来るのか」まで決める
私が自治体として特に確認すべきだと思うのが、事故や故障など、通常ではない事態への対応です。
無人タクシーが羽田空港から蒲田へ向かう途中で事故を起こした。
道路上で動かなくなった。
乗客が急病になった。
システムに異常が生じた。
この場合、
「自動運転なのでシステムに任せます」
では済みません。
道路交通法には、特定自動運行中の交通事故について専用の規定が置かれています。
また、遠隔監視型の運行については、主任者だけでなく、必要な現場措置を行う「現場措置業務実施者」の指定も制度化されています。
したがって実証を行うのであれば、
事故発生後、何分程度で人間が現場へ到達できるのか。
警察、消防とどのように情報共有するのか。
車両停止時に他の交通を妨害しない仕組みがあるのか。
こうした点まで実証項目に含めるべきでしょう。
自動運転の安全性は、
「AIが事故を起こすかどうか」
だけで判断するものではありません。
事故が起きた後に人間社会が適切に対応できるかまで含めて、安全性です。
蒲田駅周辺なら、歩行者・自転車への対応も重要
大田区で自動運転を考える場合、空港側と蒲田側では道路環境も異なります。
特に蒲田駅周辺のように、
歩行者、自転車、路線バス、タクシー、一般車両、荷さばき車両、などが
混在する地域では、自動運転システムがどこまで対応できるか慎重に検証する必要があります。
道路交通法の特定自動運行許可も、単なる技術認証ではなく、その運行が道路交通の安全と円滑を確保できることを前提としています。公安委員会は、特定自動運行計画が法律上の基準に適合しているかを審査します。
したがって、
空港から蒲田駅まで一本道で走らせればよい、
というほど簡単な話ではありません。
むしろ、
どこまでなら安全に無人運行できるのか。
を実証で確認することに意味があります。
まずは安全条件を限定した実証から
私は、自動運転に対して「安全になるまで何もしない」という考え方も、「新技術だからどんどん走らせよう」という考え方も適切ではないと思います。
法律自体が、その中間の考え方を採っています。
走行できる条件を決める。
計画を作る。
公安委員会が審査する。
主任者を置く。
遠隔監視を行う。
事故時の対応を決める。
問題があれば運行を停止する。
警察庁によると、レベル4の特定自動運行制度は2023年4月から施行されています。
既に制度はあります。
これから問われるのは、
それを地域の交通にどう使うか
です。
大田区で考えるのであれば、例えば羽田空港―JR蒲田駅という具体的な交通需要を一つのモデルケースとして、
少数台、
限定区域、
限定時間、
遠隔監視、
十分な現場対応体制、
警察・消防との連携、
運行実績の公開
といった条件のもとで検証する方法が考えられます。
羽田空港がある大田区だからこそ、法律に沿って試す
2027年には、東京で完全無人タクシーの商用運行が計画されています。
大田区には羽田空港があります。
交通需要の大きな空港を抱える自治体として、自動運転を全く考えないという選択も現実的ではなくなってくるでしょう。
ただし、自治体が技術の宣伝役になる必要もありません。
大切なのは、
便利か。
本当に安全か。
事故時の責任体制は明確か。
既存の交通事業者と共存できるか。
区民の移動に役立つか。
を確認することです。
道路交通法や道路運送法を見ると、自動運転にはすでにかなり細かな法的枠組みが用意されています。
新しい技術だから規制がないのではありません。
むしろ、
新しい技術だからこそ、運行条件、管理者、事故対応まで法律で決めた上で社会に入れていく。
これが日本の自動運転制度です。
羽田空港―JR蒲田駅を走る無人タクシー。
そんなサービスが大田区で実現する日が来るかもしれません。
そのとき大田区として重要なのは、「最先端だから導入する」という姿勢ではなく、
法律に沿って、安全性を一つずつ確認しながら、新しい交通手段を地域に取り入れていくこと。
私は、羽田空港という交通拠点を持つ大田区だからこそ、このテーマを具体的に検討していく価値があると考えています。



