グーグルマップの「クチコミ」に高評価の投稿をしたら割り引きするなどと、クリニックを訪れた人に依頼して行わせた投稿が、いわゆるステルスマーケティングにあたるとして、消費者庁は「マチノマ大森内科クリニック」を運営する医療法人社団祐真会に 景品表示法 にもとづき措置命令を行いました。
グーグルマップの「クチコミ」を操作しようとして点で、不正な行為ですが、それはたんなるGoogleの利用規定に違反しているのかと思いましたら、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠した「ステルスマーケティング」が、景品表示法で規制されているそうです。
でも、そんな規制を知っていましたか?
規制であるにもかかわらず、規制であることを周知徹底していないことは、ステルス規制ではなかろうか?
クリニックによるクチコミ偽装事案
NHKのネットニュース(2024年6月7日)より引用
グーグルマップの「クチコミ」に高評価の投稿をしたら割り引きするなどと、クリニックを訪れた人に依頼して行わせた投稿が、いわゆるステルスマーケティングにあたるとして、消費者庁はクリニックを運営する東京の医療法人に投稿の削除などを求める措置命令を行いました。
命令を受けたのは、5つのクリニックを運営する東京・大田区の医療法人社団祐真会です。
消費者庁によりますと、この医療法人は去年10月、インフルエンザワクチンを接種するために運営するクリニックのひとつを訪れた人に対し、グーグルマップの「クチコミ」の投稿で5段階中4以上の評価をしたら、接種料金から550円を割り引きをするなどと持ちかけていたということです。
こうして行われた投稿が、実際は広告主が依頼したにもかかわらず、利用者個人の感想などを装って宣伝するステルスマーケティングにあたるとして、消費者庁は投稿の削除や再発防止などを命じる措置命令を行いました。
消費者庁がステルスマーケティングだと確認した投稿は45件だということです。
ステルスマーケティングは景品表示法で禁止されている不当表示の1つとして去年10月から規制されていて、消費者庁が措置命令を行うのは初めてです。消費者庁によりますと、クリニックでグーグルマップのクチコミ投稿を依頼していたとみられる去年10月2日から17日までのクリニックへのクチコミ、269件を調べたところ、9割近くの232件が5段階中5の高評価だったということです。
一方、この期間の前のおよそ9か月間は184件中の9件、あとのおよそ3か月間では55件中の3件といずれも1割以下にとどまり、最も低い1の評価が目立っていました。
NHKニュース 2024.6.7
それなりに低評価のクリニックが裏技を弄したようです。
そもそも、クリニックが値引きを持ち掛けませんね。保険診療であれば、値引きできませんし。インフルエンザワクチン接種なので、値引きが可能なのでしょうけれども。
クチコミ偽装はGoogle利用規約違反
クチコミ偽装は、Google利用規約には抵触するでしょう。
サービスの不正使用の禁止のところに、
偽のレビューなど、偽のアカウントやコンテンツの作成とあります
そして、課される罰則は、垢BAN
このインターネット時代に、Googleの世界から存在を抹消させられるのは重い罰則です。
ただ、今回のクチコミ偽装の後でも、当該クリニックはGoogle Mapsに存在しています。なので、Google利用規約には抵触していないのかもしれません。
とはいえ、コメント欄は修羅場です。
ステルスマーケティングは景品表示法違反
さて、2023年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反となっています。
景品表示法本体のどこに「ステルスマーケティングが違法」であるか、明記されていないのです。
景品表示法が示す不当な表示の禁止
景品表示法により規制される不当な表示は、以下の通りです。
一号 商品やサービスの内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
二号 商品やサービスの価格について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認させるもの
三号 前二号ののほか、商品やサービスのについて一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの、
ということで内閣総理大臣、ひいては、消費者庁に判断が委ねられます。
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
不当景品類及び不当表示防止法 第五条
そして、この三号の名のもとに 令和5年3月28日内閣府告示第19号で
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
が指定されました。
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
令和5年3月28日内閣府告示第19号
なんだかよくわかりませんが、
この告示を一般に伝えるフレーズが
ステルスマーケティングは景品表示法違反
となっています。
参照:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
そして、ステルスマーケティングと認識されると、措置命令が出され、公開されます。
内閣総理大臣は、第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。
不当景品類及び不当表示防止法 第7条
これはこれで重いクチコミとなってしまいます。
不当景品類及び不当表示防止法こそステルスではないのか?
消費者庁はこのような中小企業に厳しく当たるのではなく、GAFAのようなプラットフォームに対してもしっかりと渡り合っていただきたいものです。
規制であるにもかかわらず、規制であることを周知徹底していないことは、ステルス規制などやっている場合ではありません。