「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」において、 フリーランス の取引適正化のための法制度が進められまして、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省で検討を行い、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」( フリーランス新法 )が4月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。フリーランス新法は、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされています。
個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられることとなります。
フリーランス新法の制定には、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が検討してきており、法の取引の適正化に係る規定については主に公正取引委員会及び中小企業庁が、就業環境の整備に係る規定については主に厚生労働省がそれぞれ執行を担います。
フリーランス 新法の経緯
2020年に行われたフリーランスの現状把握に関する調査では、フリーランスの5割超が取引先とのトラブルの経験があると回答、うち4割は、発注時に報酬や業務内容などが明示されなかったトラブルを経験。また約3割の人は取引先とのトラブルを避けるため、交渉せずに受注したり、受注そのものを断ることもあったそうです。
独占禁止法の優越的地位の乱用に当たる可能性もあるが、従来の下請法の保護では不十分として、立法が議論され、成立しました。
参考記事:下請法 下請代金支払遅延等防止法 とは?
この法律は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
フリーランス新法 第1条
フリーランス 新法 の 対象となる当事者・取引の定義
特定受託事業者 = 業務委託(物品製造や情報成果物の作成または役務の提供)をされる、従業員を雇わない事業者≒業務を受託する末端のフリーランス
特定業務委託事業者 = 特定業務委託の発注者(委託者)
発注側が特定受託事業者でも(フリーランス間の受発注でも)適用される。
この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用しないもの
二 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの2 この法律において「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である前項第一号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第二号に掲げる法人の代表者をいう。
3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造又は情報成果物の作成を委託すること。
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること。4 前項第一号の「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
一 プログラム
二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの5 この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。
6 この法律において「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用するもの
二 法人であって、2以上の役員があり、又は従業員を使用するもの7 この法律において「報酬」とは、業務委託事業者が業務委託をした場合に特定受託事業者の給付に対し支払うべき代金をいう。
フリーランス新法 第2条
特定受託事業者( フリーランス )に係る取引の適正化
特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又
は電磁的方法により明示しなければなりません。
※ 従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様。
参考記事:業務委託契約書ひな形 契約書作成の解説とテンプレート
特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならない。(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)
特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、①~⑤の行為をしてはならない。⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。
① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
特定受託業務従事者( フリーランス )の就業環境の整備
広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならない。
特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならない。
継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならない。
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも30日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
2 特定受託事業者が、前項の予告がされた日から同項の契約が満了する日までの間において、契約の解除の理由の開示を特定業務委託事業者に請求した場合には、当該特定業務委託事業者は、当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
フリーランス新法 第16条
違反した場合等の対応
公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができます。
命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金の規定、法人両罰規定もあります。
フリーランス 新法 により国が行う相談対応等の取組
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとされています。
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、特定受託事業者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
フリーランス新法 第21条
フリーランス ・ トラブル 110番
フリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」が2020年11月より設置されています。
近年、個人の働き方が多様化し、雇用関係によらないさまざまな働き方が増えています。
これらの方は、フリーランス、個人事業主、クラウドワーカーなどと呼ばれ、労働基準法上の労働者ではないとされています。このような雇用関係によらない多様な働き方をする方のための相談事業があります。
ライターやデザイナーなどが代表的ですが、職種は多岐にわたり、主に次のような方があてはまります。
スタイリスト/美容師/一人親方/トラック運転手/フードコーディネーター/ハンドメイド作家/ネイリスト/シェフ/料理研究家/エステティシャン/ハウスキーパー・ 整理収納アドバイザー/フラワーコーディネーター/スポーツトレーナー/コーチ/習い事講師/接客・販売/スポーツインストラクター/スタントマン/研修講師/アナウンサー/通訳/カウンセラー/スポットコンサル ・アドバイザー/データ入力/コンサルタント・顧問/広報・マーケター/人事・財務スペシャリスト/士業/観光ガイド・バスガイド/リサーチ・分析/クリエイティブディレクター/コピーライター/アートディレクター/俳優/編集者/映像ディレクター/ダンサー/音楽家/アーティスト/イラストレーター/イベントプロデューサー/フォトグラファー/クリエイター・ WEBデザイナー/エンジニア/ライター/翻訳家/アニメーター/文書入力/DTP/画像加工/設計・製図/プログラマー/システム設計/音声起こし 等
参考記事:厚生労働省 フリーランス新法
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