昨日、静岡県裾野市に誕生したトヨタの未来型実証都市「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」を視察いたしました。整然と新しい住棟が立ち並び、先端テクノロジーが日常生活と溶け合うスマートシティの姿を目の当たりにし、これからの都市計画・地域づくりの可能性に感銘を受けました。
大田区は日本屈指の「ものづくりのまち」であり、防災や高齢化、子育て環境のアップデートなど様々な地域課題に直面しています。今回の視察で見えたウーブン・シティの成り立ちと現場の取り組みから、大田区政へ活かすべき示唆を整理・報告いたします。
ウーブン・シティ誕生の経緯:53年の「ものづくり」の記憶を未来へ
ウーブン・シティが位置する場所は、かつてトヨタ自動車東日本株式会社の「東富士工場」があった敷地です。
- 東富士工場の歩み:1967年5月に竣工して以来、53年間にわたり「TOYOTA SPORTS 800」をはじめ、最高級車「センチュリー」や街を走る「JPN TAXI」など、累計約750万台の車両を世に送り出してきました。
- 工場の閉所と新たな挑戦:ものづくり拠点の東北集約に伴い、東富士工場は2020年12月に惜しまれつつ閉所式を迎え、生産の歴史に幕を下ろしました。
- 未来都市プロジェクトの始動:約26万8,000㎡におよぶ広大な跡地を単に手放すのではなく、長年培われた「ものづくりの精神と技術」を受け継ぎ、未来の新しい都市をつくるプロジェクトとして再スタートを切ったのがウーブン・シティです。
単なるIT主導の実験場ではなく、「50年以上にわたり地域に支えられたものづくりの聖地を、未来の社会課題解決の場へと昇華させた」という文脈は、町工場と職人の歴史を持つ大田区のまちづくりにとっても非常に示唆に富む経緯です。
視察で体感したスマートシティの仕組みと実証実験
現地では「モビリティのテストコース」として、日々の暮らしの中で様々な企業やインベンター(発明家)が実証を行う姿が確認できました。
- 住まいとコミュニティの空間構造
中心部には8つの住棟が並び、2階以上が住居となっています。各住棟は回廊でぐるりと繋がっており、隣の棟へも安全に行き来できる設計です。約300〜350人の居住が想定されており、今は約150名が暮らしてるそうです。 - 人とモビリティが共存する道路空間と「e-Palette」
白とグレーの模様が施された道では、EV「e-Palette(eパレット)」が走行するだけでなく、静止した状態でキッチンカー、移動コンビニ、診療所、休憩所など多様なサービス空間として活用されるそうです。さらに、eパレットの接近秒数をサーバーで計算し、スムーズな合流を促すよう信号機が自動で切り替わる仕組みの実証も行われています。 - 生活に溶け込むパートナー企業の実証技術
- ダイドードリンコ:壁と同一化する真っ白な自動販売機を設置。硬貨投入口やボタンを排し、QRコード決済(UVTP)に対応させることで街の景観に溶け込ませており、埋め込み型と独立型での購買行動の違いを検証しています。
- UCC:水素焙煎コーヒーの提供に加え、Vision AIカメラやスマートウォッチで心拍数などを測定し、コーヒーブレイクによるコミュニケーション活性化や会議効率への影響を分析しています。
- Z会:住民だけでなく近隣も利用できる保育所を開設。Vision AIカメラが子どもの様子を見守り、一方的な教育ではなく自発性や主体性を引き出す個別最適化教育に取り組んでいます。
- 都市インフラの可変性と強靭性
電線はすべて地中に高圧配線され、電柱のない美しい景観が維持されています。街路灯や信号の役割を果たす「多機能ポール」にはレール構造があり、通信アクセスポイントやカメラの増設が可能なほか、足元にはコンセントやUSBポートが備えられ、実証実験の電力供給や災害時の電源としても機能します。また、3Dプリンター製のベンチや植栽はフォークリフトで自由に移動できるよう設計されており、空間の用途を自在に変更できます。

スマートシティーの視察としては、2019年の仁川も強い記憶に残っていますので、コチラもご紹介しておきます > 視察:仁川経済特区
大田区の未来へ向けたまちづくりへの提言
ウーブン・シティは完成された都市ではなく、住民とともに未完成のまま改善を繰り返す「アジャイルなまちづくり」を実践していました。この思想を大田区にどう落とし込むべきか、3つの視点を持ち帰りました。
- 先端技術の実証フィールド化(新産業・町工場との連携)
大田区には羽田イノベーションシティなどの拠点がありますが、点での実証にとどまらず、ウーブン・シティのように「区民生活・コミュニティの中で実際に使われ、フィードバックが届く仕組み」も検討の価値があります。 - 防災と日常を両立するスマートインフラの整備
電線の地中化や、平常時は街路灯・センサーとして機能し、非常時には非常用電源となる「多機能ポール」のようなインフラは、密集市街地や水害リスクを抱える大田区の防災力強化に直結します。 - データとAIを活用した誰一人取り残さない地域福祉・子育て
見守りカメラやバイタルデータを監視ではなく「一人ひとりに寄り添う教育や健康づくりの支援」に活かすアプローチは、少子高齢化が進む大田区の教育・福祉政策においても検討の余地があります。

ウーブン・シティに関するQ&A
Q1. トヨタ「ウーブン・シティ(Toyota Woven City)」とはどのような都市ですか?
A1. トヨタグループが静岡県裾野市に建設した、未来の当たり前となる製品やサービスを生み出し実証するための「モビリティのテストコース」です。ヒト、モノ、情報、エネルギーの移動を通じて日々の社会課題を解決し、「幸せの量産」を目指す実証都市として位置づけられています。
Q2. ウーブン・シティが誕生した歴史的経緯は何ですか?
A2. 1967年から53年間にわたり「センチュリー」や「JPN TAXI」など約750万台の自動車を生産してきた「トヨタ自動車東日本・東富士工場」が2020年12月に閉所したことを契機としています。その約26万8,000㎡におよぶ工場跡地を活用し、培われたものづくりの精神を受け継ぎながら新しい未来都市をつくるプロジェクトとして誕生しました。
Q3. ウーブン・シティ内ではどのような最先端の設備や実験が行われていますか?
A3. EV「e-Palette」を活用した移動型サービスや信号連携、電線の地中化、非常用給電やカメラ拡張が可能な「多機能ポール」、3Dプリンター製の可動式ベンチなどが導入されています。また、景観に溶け込むQRコード式自動販売機、水素焙煎コーヒーと生体データを組み合わせた職場環境分析、Vision AIカメラを活用した個別最適化保育など、パートナー企業とともに生活に直結する多様な実証実験が行われています。

本記事はYouTubeライブの内容を元に作成しました。詳細は動画アーカイブをご覧ください。

