離婚ADRとは、裁判所を使わずに、中立の専門家(調停人)を交えて離婚の条件を話し合う手続きです。法務大臣の認証を受けた民間の事業者が行うものを「かいけつサポート」と呼びます。非公開で行われ、土日・夜間やオンラインに対応する事業者もあります。費用は事業者ごとに決まっています。大田区では2026年4月から、ひとり親世帯が養育費をADRで取り決めた費用を、上限5万円まで補助しています。
大田区の皆様の暮らしを守り、 離婚協議 家族や近隣のトラブルを「争い」で終わらせないために、私は新しい紛争解決のカタチである ADR(裁判外紛争解決手続)、そしてその最新形態である ODR(オンライン紛争解決)の活用を推進します。
「離婚を考えているが、相手と冷静に話せない」「隣人と揉めたくないが、解決したい」——そんな切実な悩みに寄り添うためのガイドです。
ADR制度の詳細 —— 裁判とは何が違うのか?
法的なトラブルが起きたとき、多くの人は「裁判」をイメージしますが、日常生活のトラブルにはADRが適している場合が多くあります。ADRとは、裁判所の手続きによらずに、公正な第三者が関与して話し合いで解決を図る仕組みです。
ADRと公式な裁判との違いを詳しく解説します。
- 「勝ち負け」ではなく「双方が納得できる合意」を目指す: 裁判は、証拠に基づいて裁判官が「白黒」をつける場所です。一方、ADRは「対話」が主役です。調停人と呼ばれる中立な第三者が、双方の言い分や感情を丁寧に聞き取り、利害を調整して、双方が納得できる合意(和解)を目指します。
- 「非公開」でプライバシーを徹底保護: 裁判は原則、誰でも傍聴できる「公開」の場で行われます。離婚や近隣トラブルの内容を世間に知られたくないのは当然です。ADRは原則「非公開」で行われるため、家族のプライバシーや営業秘密を守りながら、安心して本音で話し合うことができます。
- 「専門家」による柔軟な解決とスピード: 裁判官ではなく、トラブルの内容に適した弁護士、司法書士、カウンセラー、各業界の専門家などが調停人を務めます。裁判のように厳格な法律(民事訴訟法)に縛られすぎないため、土日・夜間の開催や、WEB会議を活用した迅速かつ柔軟な解決が期待できます。
- 「関係修復」に強い: 裁判で判決が下ると、その後の関係は断絶してしまいがちです。ADRは話し合いで解決するため、離婚後の共同養育や、解決後の近所付き合いなど、良好な関係を維持しやすいという大きな特徴があります。
法務大臣のお墨付き「認証ADR(かいけつサポート)」
民間事業者が運営するADRの中でも、法務大臣が中立性や専門性、費用の透明性などの厳しい法的基準をクリアしていると認めたものを「認証ADR(かいけつサポート)」と呼びます。
この制度を利用すると、裁判所の手続きと同等の強力なメリットが得られます。
- 時効の完成猶予: 話し合いがまとまらずに終わっても、終了の通知から1か月以内に訴えを起こせば、ADRで請求した時に訴えがあったものとみなされます(ADR法第25条)。話し合いの間に時効が過ぎる心配を減らせます。
- 特定和解(強制執行の道): 認証ADRで成立した和解のうち、「強制執行ができる」と合意したもの(特定和解)は、裁判所の執行決定を経て、預金や給与の差し押さえができます(ADR法第27条の2)。ただし離婚など家庭の紛争では、対象は養育費や婚姻費用などのお金に限られます。財産分与や慰謝料は対象外です(同法第27条の3)。
- オンライン解決(ODR): スマホやPCを使い、チャットやWeb会議で自宅から手続きを進められるため、遠距離に住む相手や、直接会うのが辛い相手とも話し合いが可能です。
離婚協議 もADRで! —— 裁判所へ行く前の賢い選択
「離婚」はADRが最も得意とする分野の一つです。
- 感情的な対立を専門家がサポート: 夫婦が感情的になって直接話せない場合でも、専門家(弁護士やカウンセラー等)が間に入ることで、冷静に相手の心情を汲み取りながら、親権や養育費、財産分与などの条件を整理できます。
- まとまらなくても、家裁の調停をやり直さずに済む: 通常、離婚訴訟を起こすには、まず家庭裁判所で調停を受けなければなりません(調停前置主義)。しかし、認証ADRで話し合い、和解の見込みがないとして手続きが終わった場合は、家裁の調停を経ずに離婚訴訟を起こせます。ただし、裁判所が適当と認めれば、調停に回されることもあります(ADR法第27条)。
- 養育費の支払い確保: 養育費を「強制執行ができる」と合意して取り決めておけば(特定和解)、支払いが滞ったときに、裁判所の執行決定を経て差し押さえができます。
どんな事業者がいるのか —— 司法書士会のケースを例に
2026年11月4日時点で、全国で175の認証事業者が活動しています(法務省「かいけつサポート」)。このうち離婚トラブルを扱う事業者は、離婚トラブルを取り扱っている認証事業者の一覧で、所在地やオンライン・土日対応の有無を確かめられます。
- 家族問題のスペシャリスト: 「一般社団法人りむすび」や「家族のためのADRセンター」など、離婚や養育費、面会交流に特化した事業者が多数存在します。
- 身近な相談先:東京司法書士会「すてっき」: 司法書士が調停人となり、1回2〜3時間をかけてじっくり対話をサポートします。
- 受付相談: 無料(まずは気軽に相談できます)
- 申込手数料: 11,000円(税込)
- 期日手数料: 1回につき、申込人と相手方それぞれ5,500円(税込)
- 合意成立手数料: 和解成立時、解決額に応じて発生(例:140万円以下の解決で30,000円)
大田区にADR費用の補助はありますか? —— 2026年4月から上限5万円
あります。大田区は「ひとり親家庭等養育費確保支援事業」で、養育費をADRで取り決めた費用を上限5万円まで補助しています。2026年4月1日以降に作成した申立書等が対象です。公正証書や家庭裁判所の調停で取り決めた場合は、上限3万円です(大田区ひとり親家庭等養育費確保支援事業)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 申請日に大田区に住むひとり親世帯で、養育費の取り決めの費用を負担し、対象の子を扶養している方(過去にこの補助を受けていないこと) |
| ADRで対象になる費用 | 申立手数料、期日手数料、成立手数料 |
| 上限額 | ADR:5万円/公正証書・家裁の調停や裁判:3万円 |
| 申請期限 | 公正証書等を作成した日から6か月以内 |
| 申請先 | 大田区こども未来部 子育ち支援課 子育ち支援担当(本庁舎3階)電話 03-5744-1653(事前予約制) |
離婚や養育費の悩みは、区の「離婚と養育費にかかわる総合相談」でも相談できます。弁護士に1時間無料で相談でき、託児やオンライン相談もあります。2026年度は11月14日と12月19日(いずれも土曜)にも開かれます。
ただし、今の補助はひとり親世帯の養育費の取り決めに限られます。面会交流の話し合いや、近隣トラブルには使えません。私は、大田区長を目指す立場として、ADRの費用補助の対象を広げることを提案します。
前回の記事では、離婚協議書の公正証書作成費用の補助についても提言いたしました。
離婚や近隣トラブルに直面した区民の皆様が、経済的な不安なく「まずは話し合ってみよう」と前向きに一歩を踏み出せるよう、行政がしっかりとバックアップします。デジタルの利便性と対話の温かさを融合させ、大田区を トラブルが円満に解決される、日本一安心な街 へと変えてまいります。
離婚ADRのよくある質問
離婚ADRとは何ですか?
裁判所を使わずに、中立の専門家(調停人)を交えて、親権・養育費・財産分与などの離婚条件を話し合う手続きです。法務大臣の認証を受けた民間事業者が行うものを「かいけつサポート」と呼びます。
離婚ADRと家庭裁判所の調停は、どう違いますか?
家裁の調停は裁判所で行う手続きです。ADRは民間の事業者が行い、土日・夜間やオンラインに対応する事業者もあります。どちらも非公開で、話し合いで合意を目指す点は同じです。
離婚ADRの費用はいくらですか?
事業者ごとに違います。例えば東京司法書士会の「すてっき」は、受付相談が無料、申込手数料が11,000円、期日ごとに各当事者5,500円です。合意したときは成立手数料がかかり、140万円以下の合意なら3万円です。
大田区で、ADRの費用の補助はありますか?
あります。ひとり親世帯が養育費をADRで取り決めた場合、申立手数料・期日手数料・成立手数料を上限5万円まで補助します。2026年4月1日以降に作成した申立書等が対象で、作成から6か月以内に申請します。
ADRで決めた養育費が払われないとき、強制執行できますか?
認証ADRで「強制執行ができる」と合意した和解(特定和解)なら、裁判所の執行決定を経て差し押さえができます。家庭の紛争で対象になるのは、養育費や婚姻費用などです。財産分与や慰謝料は対象外です。
ADRでまとまらなかったら、家裁の調停をやり直す必要がありますか?
認証ADRが「和解の見込みがない」として終わった場合は、家裁の調停を経ずに離婚訴訟を起こせます。ただし、裁判所が適当と認めれば、調停に回されることがあります。
相手がADRに応じないときは、どうなりますか?
ADRは、当事者双方から依頼を受けて行う手続きです。相手が応じなければ話し合いは始まりません。その場合は、家庭裁判所の調停を検討します。
大田区で、離婚や養育費の相談はどこでできますか?
区の「離婚と養育費にかかわる総合相談」で、弁護士に1時間無料で相談できます。19歳以下の子がいる区内在住の保護者が対象で、電話予約制です。問い合わせは子育ち支援課(03-5744-1653)です。

執筆:岡高志(行政書士・元大田区議会議員(2期))。日本行政書士会連合会 登録番号 第11080007号(会員検索で照合できます)。
制度情報の時点:2026年11月時点の法令(ADR法)と、大田区・法務省・東京司法書士会の公式ページに基づきます。


